荒れた思春期を乗り越え、幸せをつかんだはずだったのに--。大阪市西区のマンションで幼児2人の遺体が見つかった事件。母親の下村早苗容疑者(23)は中学時代、非行に走ったが、不登校などの子も多く集まる東京の高等専修学校で更生、ラグビー部のマネジャーとして活躍していた。卒業後は就職、結婚と順調に歩んでいたようにみえた。関係者は、事件との落差にショックを隠せない。
下村容疑者は3姉妹の長女。中学時代は髪を茶色に染め、夜の街を徘徊(はいかい)した。高校ラグビーの指導者として有名な父親(49)は、専修学校のラグビー部監督を務める知人の教諭に娘を託した。下村容疑者は中学卒業後、この教諭の母親の家に下宿した。卒業まで3年間、教諭のクラスで学び、放課後はラグビー部員の世話に汗を流した。
「子どもが大きくなったな」「はーい」。教諭は昨年3月、三重県で下村容疑者に会い、こんな会話を交わしたという。教諭は「元気そうだった」と振り返り、逮捕については「泣きたい」と絶句した。
卒業後は同県四日市市の飲食店に就職した。間もなく地元の男性と出会い、結婚した。犠牲になった長女の羽木(はぎ)桜子ちゃん(3)、長男楓(かえで)ちゃん(1歳9カ月)を授かった。
しかし、昨年5月に離婚。幼い2人を引き取り、名古屋の飲食店で働いていた。その後、今年1月から大阪・ミナミの風俗店に勤め、ワンルームマンションに転居した。
ある日の夕方、下村容疑者が近くの公園に桜子ちゃんら2人を連れてきたのを、近くの人が見ている。下村容疑者は子どもを遊ばせ、ベンチに腰かけてたばこを吸い、携帯電話の画面を眺めていた。桜子ちゃんが「ママー」と呼んでも無視していたという。数カ月後、幼い2人は母親に見捨てられ、命を失った。
下村容疑者が中学の卒業文集に書いた夢は「むっちゃ幸せになること」。つかみかけた幸せを、いつしか手放していた。
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