欧州単一通貨ユーロ(16カ国)を導入しているアイルランドやポルトガルなどで信用不安が再びくすぶり始めた。先月末の欧州連合(EU)首脳会議で緊急時の救済制度常設を決めた際、ドイツとフランスの首脳が民間の国債保有者にも損失負担を求めたのがきっかけだ。将来の債務再編を警戒して市場は「PIIGS」と呼ばれるアイルランドや南欧諸国など“ユーロ圏周縁国”の国債購入に慎重になっている。
受講者殺到…バブル崩壊アイルランド、農業回帰
アイルランドのレニハン財務相は9日夜の英BBC放送の番組で、「わが国は財政再建に取り組んでおり、EUに救済を仰ぐつもりはない」と述べ、債務再編を含めた債務不履行(デフォルト)懸念を打ち消した。
しかし、先月中旬に6%前後だった10年物国債の金利は9日、8・17%まで上昇。アイルランド政府は先月と今月に予定していた国債の入札を中止した。
膨らむ赤字削減額
「ケルトの虎」と呼ばれる高度成長を続けた同国では不動産バブルが崩壊。不良債権の評価が甘かったこともあり、今後4年間の財政赤字削減額が75億ユーロ(約8450億円)から150億ユーロ(約1兆6900億円)に膨らんだ。連立与党の支持率は22%まで急落し、野党3党の68%を下回る。
来年の財政赤字を国内総生産(GDP)比で今年の7・3%から4・6%まで減らす計画のポルトガル。10日に最大12億5千万ユーロ(約1400億円)の入札を行うが、10年物国債の金利が6・9%まで上昇。ドスサントス財務相は「7%がEUなどへの支援要請を検討するタイミングになるかもしれない」との考えを示しており、市場の警戒心は高まっている。
金利が一気に上昇
EUは先月28、29日の首脳会議でユーロ導入国がギリシャ財政危機のような緊急事態に陥った場合、救済する危機メカニズムとして欧州版IMF(国際通貨基金)の常設を決めた。
メルケル独首相とサルコジ仏大統領が金融機関など国債保有者の損失負担に言及したため、市場は「周縁国」の国債購入に慎重になり金利が一気に上昇した。
緊縮財政策に反対する左翼過激派による連続小包爆弾事件が起きたギリシャでも10年物国債の金利は11・44%に上昇している。
ロンドンのヘッジファンド「キャプラ・インベストメント・マネジメント」の浅井将雄氏は、「5月のユーロ危機のレベルほどではない。各国政府が財政再建を進め、欧州中央銀行(ECB)も金融緩和策の出口戦略を模索する欧州の取り組みは、かなりの困難を伴うが評価できる」とみている。
PR