カビの発生で食用に適さなくなった事故米82トンが、不正に食用米として転売されていたことが判明し、農林水産省が業者4社を告発することがわかった。不正転売が2008年に発覚したのを受け同省は当時、転売の有無について追跡調査し、今回新たに判明した82トンを含む商社輸入分5千トン余を「飼料用に使われたことを確認した」と公表したが、今年になって業者による加工台帳の偽装が判明した。当時の調査のずさんさが今になって露呈した形だ。
農水省によると、問題の米は07年4月、輸入米に高関税をかける代わりに一定量の輸入が義務づけられたミニマムアクセス(MA)米として豊田通商(名古屋市)が米国から輸入、同年6月、検疫でカビが確認された。そこで、同社は飼料用として甘糟損害貨物(神奈川県)に販売。協和精麦(同)で飼料用に処理されるはずだったが、米は実際には石田物産(同)、共伸商事(愛知県)へと流通し、最終的には事故米ということを隠して、複数の食品加工業者に食用として販売された疑いが強い。台帳類は、協和精麦で飼料処理されたように偽装されていた。
三笠フーズ(大阪市)や浅井(名古屋市)が、国販売の事故米を不正に転売していたため、農水省は厚生労働省と連携し、商社の輸入販売分も追跡調査。08年11月、今回の82トンを含む5251トンについて、飼料用での使用を確認できたとして問題はないと公表していた。
だが、実際の調査では、取引先の保護や企業秘密を盾に、売却先の情報提供を拒む業者が続出。強制捜査権がなく、台帳や書類に矛盾がないかの確認が中心で業者の申告をうのみにせざるをえず、結果的に協和精麦による加工台帳の偽装を見抜けなかったと見られる。
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