虐待や親の病気などのために家庭で暮らせない子供が生活する児童養護施設(575カ所、約3万人)を巡り、厚生労働省は関連省令を改正し1948年以来「1部屋15人まで可」としてきた居室定員を見直すことを決めた。上限を4~6人とする方向で検討している。施設で暮らす子供の里親への委託を促進するため、委託に関するガイドラインも初めて制定する。28日の専門家会合で案を示し、4月にも実施する。
改正するのは「児童福祉施設最低基準」。現在は居室の居住定員と面積について、年齢に関係なく「1部屋15人以下、1人あたり面積3.3平方メートル以上」とされている。面積は97年度に2.47平方メートルから現行に改正されたが、定員は見直してこなかった。
児童養護施設は虐待を受けた入所児が5割を超え、手厚いケアが求められている。最近では高校生は個室という施設も増えたが、7歳以上の子供10人が大部屋で暮らす施設もある。思春期の子供たちが相部屋で暮らす中部地方の施設長は「日常の小競り合いがエスカレートしないよう目配りが必要」と話す。
1人当たりの面積を巡っても、国の「住生活基本計画」は「最低居住面積水準」を10歳以上は1人約5平方メートルとし、児童養護施設の狭さが際立つ。養護老人ホーム(1部屋原則1人、10.65平方メートル以上)や、障害者支援施設(4人以下、9.9平方メートル以上)より低い基準だ。
一方、国は家庭で暮らせない子供の処遇を改善するため、里親委託の促進や施設の小規模化を進めてきた。里親委託児童数は09年度末で3836人と、10年間で1.8倍に増えたが、家庭で暮らせない子供が増えているため委託率は1割強にとどまる。このため、里親委託のガイドラインを策定することにした。
ガイドラインは自治体が子供を委託する際の基本指針となる。虐待や障害のために手厚い支援の必要な子供が増えており、委託後の親子関係の把握や里親への支援の在り方について、会合で中身を詰める。
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