インターネット検索最大手のグーグルが、マイクロソフト(MS)が牛耳るパソコン(PC)向け基本ソフト(OS)市場に殴り込みをかける。グーグル初のPC向けOS「クローム」搭載機を、国内外の有力PCメーカーが2011年半ばに発売する。市場シェア9割超のMS「ウィンドウズ」との最大の違いはクロームが“無料”という点で、PCの低価格化が進む可能性が高い。成功すればMSのビジネスモデルは崩壊し、業界地図が塗り替わる。
新ビジネスモデル
「クロームは、OSの世界で有望な選択肢になる」
グーグルのエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は今月7日、米サンフランシスコで開催したイベントでクローム普及に自信を見せた。クロームOSは、東芝や韓国・サムスン電子、台湾・エイサーなど有力メーカーが採用する。
クロームは、ネットワーク経由でソフトウエアなどを提供する「クラウドコンピューティング」を利用する。ウィンドウズ搭載PCでは、文書作成の「ワード」などのソフトを使って作業をするが、クロームではソフトが不要。ネット経由で、その機能だけを使用できる。
ソフトがない分、PCの起動スピードが速く、セキュリティー面もネット側で簡単に一括管理できるメリットがある。究極的にはハードディスクなど記憶装置も不要で、PCの概念を根底から変える可能性を秘める。
PC向けOS市場では、自社製品向けに開発するアップルの「Mac(マック)OS」が5%程度を占めるのがやっとで、MSのウィンドウズが9割超のシェアを独占。グーグルはOSとともにワープロや表計算、ネット閲覧など各種機能も無料で提供し、広告収入で利益を得るビジネスモデルでMSの牙城を切り崩したい考えだ。
先兵 アンドロイド
だが、クロームOSが一気にウィンドウズを抜き去るというシナリオは考えにくい。実績があるウィンドウズに勝る信頼性をクロームが獲得するには時間が必要。ソフトが不要なため、PCを製品化するうえで差別化が難しい点も普及へのハードルだ。メーカーとしては開発のインセンティブが働きにくい。東芝の佐々木則夫社長は「OSの目新しさだけでなく、メーカーとしての独自性を出すことが重要」と強調する。
ただ、グーグルは携帯端末向け無料OS「アンドロイド」で、スマートフォン(高機能携帯電話)市場を中心にシェアを急上昇させ、MSにプレッシャーをかけ始めている。IT調査会社のIDCジャパンの片山雅弘グループマネージャーは「来年も急激な勢いで搭載端末を増やす」と予測する。
アンドロイドを先兵に、クロームで本丸に攻め込む。グーグルとMSとの激闘が、いよいよ幕を開ける。
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