zhaohua9
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こういった、「物語にとっては意味のない言葉」も、それまでの字幕では無視されていたのに対し、ちゃんと翻訳された。この言葉は『スターウォーズ』世界の背景の広がりを見せるために、ルーカスによって入れられたものだからである。 The Lord of the Rings
やがて、『EpisodeI』が公開されることになったとき、その日本語字幕は戸田奈津子氏に決まった。ルーカスフィルム(20世紀フォックスフィルムだったかもしれない)から「戸田氏にやってほしい」と指定してきたという。恐らく「一番しっかりした人にやってもらいたい」「日本で一番有名な翻訳者を」という事になったのではなかろうか。しかし、有名だからといって訳が上手いということではなかったようだ。
映画を観たとき、冒頭の日本語字幕で、いきなり「バトルシップ艦隊」等という言葉を見てまず私は腰砕けになった。何故「戦艦隊」ではなく「バトルシップ艦隊」なのか?さらに、オビ=ワンとクワイ=ガンがナブーに降り立ったとき、ジャージャーを見て「ローカルの星人だ」というのは一体どこの国の言葉だ?原文ではAlocal.と簡単な言葉にされているので、「原住民だ」とか「この星の者だ」としてしまえばいいのに。
他にも「ボランティア軍」だの、どこにも存在しない言葉を勝手に捏造している(もちろんこれは「義勇軍」とすべきである)。これは誤訳というよりは、「言葉を使うセンスがない」というレベルである。
また戸田氏は、自分が理解できない言葉を、別の言葉にすり替える習慣があるらしい。例えば『スター・ウォーズEpisodeI』で「マカニク(Mackineek)」という言葉をボス・ナスが使っている。この「マカニク」とはドロイドを表すグンガンの言葉らしいが、本編中ではその事は一言も説明されていない。つまり英語圏の人間にとってもマカニクは謎の言葉であり、物語を見て「ああ、マカニクはドロイドのことか」と想像させるように仕向けられている。「マカニク」という言葉が理解できない人間のことより、世界観が重視されているのである。指輪物語ロードオブザリング 冥王サウロン 1:1 ヘルメット
だが戸田氏はこのあたりの脚本の意志を完全に無視し、「わからないから」と勝手に「マカニク」を「マシーン」と書き換えてしまった。確かにそれで判りやすくはなっただろうが、それによって『スターウォーズ』の世界観の広がりを潰してしまっている。戸田氏は同様のことを、映画『タイタニック』で行っている。劇中の救難信号を討つシーンで、「CQDを打て」を、「SOSを打て」に勝手に直してしまった。キャメロンは歴史的事実を尊重して、観客に意味が通じないという危険を敢えて冒しつつ「CQDを」としたのに、その制作者の意図を、演出権限など全くないはずの字幕翻訳家が勝手に変えてしまったのである。同様に、『地獄の黙示録』で軍のヘリが墜落する時に「メーデー!」と言っているのを「SOS!」としてしまった。もちろん軍隊では「SOS」などという言葉は使わない。
このように「字幕でわかりやすくする」等というのは、どう考えても映画製作者の意図に沿わない「余計なお世話」ではないだろうか。
他にもちろん単純な誤解による誤訳もある。人間が翻訳をする以上、どうしても間違いというものは発生する。その間違いをいちいちあげつらっていても仕方がない。だが戸田氏の場合、根本的に字幕翻訳家としての思想に問題があるのではないか。
字幕とは、ないに超したことはないものである。「字幕があるということを意識しない字幕」がもっとも理想なのだ。何故なら字幕翻訳者とは、監督でも演出でもない、単なる黒子なのだから。
「字幕は映画を良くすることは出来ないが、悪くすることは出来る」という言葉があった。そのため字幕翻訳者というのは辛い仕事だ。良い仕事を続けていても滅多に注目されることはなく、悪い仕事(誤訳)だけが注目される。だがこの「黒子」に徹しきれないというのであれば、正しい字幕翻訳者と言えないのではないか。